パーフェクトレーサーとは? 30秒のバランスゲームをわかりやすく解説
著者 Shaun Cheon
要点:パーフェクトレーサーは、Ultiracerのキオスクで遊べる30秒のチャレンジです。左右に揺れ、ハンドルも切れる本物の自転車に乗り、画面の道路の真ん中を走り続けることだけを目指します。中央を保てばスピードのブーストが付き、長く保つほどブーストは最大3倍まで大きくなります。このゲームは高麗大学での研究から生まれました。Ultiracerで中央を保ちながら走る短いライドから、人が自転車をどうやって倒さずに保っているのかが、思いのほかよくわかったのです。私たちは研究の課題と、同じ種類の指標を生かしてゲームに仕立てました。今ではライドの最後に、バランスと協調の様子が一目でわかる結果が表示されます。この記事では、パーフェクトレーサーの成り立ちとしくみ、安定したライダーが速いライダーに勝てる理由、そして4,000回を超えるライドから見えてきた年代ごとの乗り方の違いを紹介します。

はじまりは高麗大学での30秒×3回のライド
パーフェクトレーサーは、もともとゲームとして生まれたものではありません。出発点は研究のための課題でした。
高麗大学の研究者たちは、人が自転車の上でどのようにバランスを保っているのかを調べるためにUltiracerを使いました。Ultiracerは固定式のエクササイズバイクではありません。ライダーの自転車はローラーと左右にスライドする台の上に載っているため、路上の自転車と同じように揺れたり傾いたりします。それでいて、ライダーが転倒しないようにプラットフォームが支えています。参加者はそれぞれ楽なペースで30秒のラウンドを3回走り、ゲーム風の画面に表示された目印を中央線の上に保つよう努めました。センサーは自転車の速度、左右の位置、そしてハンドルとサドルにかかる力を記録しました(Kang et al., 2025; Kim et al., 2025)。
2つの研究では、主に軽度のパーキンソン病のある人と、同年代の健康な成人を比較しました。その結果のうち2つが、私たちのその後のものづくりを方向づけました。
- 短いライドにも多くの情報が含まれる。30秒のラウンドから得た指標で、2つのグループをよく見分けることができました。姉妹編のAI研究では、わずか2秒分のライドにも有用な手がかりが含まれており、なかでも最も多くの情報をもたらしたのは自転車の左右のずれでした。
- 揺れの大きさだけでなく、バランスの取り方が大切。パーキンソン病のあるライダーは、実は健康なライダーよりも揺れが小さかった(17.1 mmに対して22.8 mm)のですが、バランスの取り方が違っていました。新しい指標であるハンドル–サドル協調指数によって、ライダーが体の傾きとハンドル操作をひとまとまりで行っているのか、それとも傾きを打ち消すようにハンドルを使っているのかがわかりました。
パーフェクトレーサーは医学的な検査ではなく、何らかの病気を調べるものでもありません。私たちが研究から受け継いだのは、課題の形式と指標の種類です。中央を保って走る短いライドは、バランスと協調を練習し、その変化を時間を追って確かめるための実用的な方法だと、私たちは考えています。
研究室からキオスクへ
研究課題の核となる部分はそのままに、そのまわりにゲームをつくりました。
- 同じ課題。自分のペースで、30秒間、自転車を道路の真ん中に保ちます。
- 同じ種類の指標。自転車が中央からどれだけずれるか、車体とハンドルがどれだけ安定しているか、そしてハンドル操作と体の傾きがどう連動しているかを見ます。私たちのキオスクでは、これらをハンドルと車体の動きから計測しています。
- また乗りたくなる理由。ソウルやドバイの街並みからアルプスの谷、田園の道まで広がる風景、中央を保つと付くスピードのブースト、EからSまでのティア、リーダーボード、そしてライドの内容をわかりやすい言葉で説明する結果画面を用意しました。
1分もかからずに終わるため、パーフェクトレーサーはイベントで人気を集めています。列はどんどん進み、ライダーは自分の距離を更新しようと何度でも挑戦できます。
ライドの間ずっと回り続ける、ひとつのループ

パーフェクトレーサーでは、1秒ごとに同じループが回っています。
- 見る。道路の上で自転車がどこにあるかを目で追います。ずれが始まると、その瞬間に画面に表れます。
- 判断する。脳が修正のしかたを選びます。どれだけハンドルを切るか、どれだけ体重を移すかを決めます。
- 動かす。体幹、腰、手がそれを実行し、本物の自転車のハンドルを切り、車体を傾けます。
- 映す。画面が新しい位置をすぐに表示し、ループがまた始まります。
自転車が実際に動くので、どの修正もきちんと結果に表れ、修正しすぎればそれもはっきり見えます。私たちのキオスクでの典型的な30秒のライドでは、ライダーはハンドルを切る向きを約75回切り替えています。見て、判断して、調整する。この絶え間ないサイクルこそが、ライダーが集中し続けられる理由であり、バランスと協調に欠かせない練習そのものです。その場で修正し、それを繰り返すうちに、修正はより小さく、よりなめらかになっていきます。
ゲームのしくみをわかりやすく

パーフェクトレーサーは距離で採点されます。速くこぐほど遠くまで進みますが、道路のどこを走るかも同じくらい大切です。
- まずはウォームアップ。計測が始まる前に、音楽に合わせた10秒のカウントダウンでペダルをこぎ始めます。そのあとが30秒の本番です。
- センターレーンを走ってブースト。狭いセンターレーンの中では、速度が1.3倍として計算されます。レーンのちょうど真ん中、中央線に沿った部分(ど真ん中)では2倍です。
- とどまり続けるとブーストが大きくなる。センターレーンに4秒続けてとどまると、ブーストが一段上がり、レーン内で2倍、ど真ん中で3倍になります。レーン内にいればどこでも4秒に数えられるので、レーンとど真ん中を行き来してもカウントはリセットされません。とどまっている間はバーがたまっていき、キープボーナスが入ると金色に変わります。
- レーンから出るとカウントはやり直し。一瞬でもレーンを出ると、4秒のカウントはゼロから数え直しになります。
- 端は避ける。左右どちらかの端に大きく寄ると、戻るまで速度は0.7倍としてしか計算されません。
- こぎ続ける。6 km/h未満では、距離はまったく伸びません。

安定したライダーが速いライダーに勝てる理由

ブーストがあるため、純粋なパワーよりもコントロールのほうが大きな価値を持ちます。上のグラフは、50代のライダー2人による実際のキオスクでのライドです。一方は平均38.6 km/hで走りましたが、センターレーンにいたのはライドのわずか12%で、半分以上の時間を、速度が割り引かれる端の近くで過ごしていました。もう一方の平均は15.8 km/hと半分以下の速さでしたが、96%の時間をセンターレーンで過ごし、ライドの大半を高いブーストで走りました。安定したライダーの距離は375 mで、22%遠くまで進みました。
これこそがこのゲームの考え方です。動いている自転車を倒さずに保つのは、全身を使う技能です。ライダーはハンドル操作、上半身の傾き、膝の動きでバランスを取っています(Cain et al., 2016)。安定した体幹が上半身を落ち着かせ、腰がペダルの回転をなめらかに保ち、手が小さくタイミングのよいハンドル修正を行います。ペダルを強く踏み込んでも、そのたびに自転車が横にぶれてしまっては意味がありません。パーフェクトレーサーが報いるのは、いちばん力強くこぐライダーだけではなく、体をうまく協調させられるライダーです。
ライドで測るもの

30秒が終わると、結果画面に距離とティアが表示され、あわせてライド時間、平均速度と最高速度、カロリー、ケイデンスも示されます。センサーがライド全体を記録できた場合は、バランスと協調のまとめも加わります。
- バランス品質(0〜100):全体的な安定性です。自転車が中央からどれだけずれたか、車体が左右にどれだけ揺れたか、傾きがどれだけ速く変化したか、ハンドルを切る向きをどれだけ頻繁に切り替えたかを組み合わせています。
- 協調:主にハンドル操作でバランスを保ったのか、主に体の傾きで保ったのか、あるいはその両方を組み合わせたのかを示します。
- あなたの強みと伸びしろ:4つの安定性の指標(スウェイ、リーン安定性、ステアリング安定性、ステアリング効率)のうち、最もよくできたものと、最も伸びしろのあるものを、それぞれ他のライダーと比べて示します。
これらの数値は、ご自身のライドを時間を追って比べるための気づきであり、医学的な評価ではありません。
ハンドル–サドル協調指数とは

高麗大学の研究のなかで、私たちが最も興味深いと考えているのがハンドル–サドル協調指数です。自転車が傾き始めたとき、反応のしかたは大きく分けて2つあります。ひとつは、傾きと逆の方向にハンドルを切って自転車を体の真下に引き戻すやり方で、ハンドル操作と体の傾きを別々の道具として使います。もうひとつは、体を傾けるのとハンドルを切るのを同時に行い、ハンドルと腰をひとつのかたまりとして動かすやり方です。
研究者たちは、ハンドルにかかる力とサドルにかかる力を刻々と比べることで、これを測りました。2つが同じ方向に動くと指数はプラスになり、ライダーと自転車が一体となって動いていることを示します。逆方向に動くとマイナスになり、ハンドル操作が傾きを打ち消していることを示します。研究では、健康な高齢者の平均は0.11とほぼ中立だったのに対し、軽度のパーキンソン病のあるライダーの平均は0.47でした。これはハンドルと体の動きが強く結びついたスタイルで、以前の研究では自転車の初心者にも見られていたものです(Cain et al., 2016)。パーキンソン病のグループの中では、結びつきが強いスタイルほど、歩行に関する指標が良くない傾向がありました(Kang et al., 2025)。
なぜこれが大切なのでしょうか。同じだけふらつく2人のライダーでも、バランスの取り方は違うことがあるからです。この指数がとらえるのは、結果だけでなくその戦略です。Ultiracerのキオスクでは、同じ関係をハンドルの切れ角と車体の傾きから、−1から+1の尺度で測っています。上のグラフの2つのライドは、バランス品質がほぼ同じ(70と71)なのに、スタイルは正反対です。一方は傾きと逆にハンドルを切り(−0.66)、もう一方はハンドルと傾きを一緒に動かしています(+0.62)。どちらのスタイルも、それだけで正しいとも間違っているとも言えません。そのため私たちは、協調を点数ではなく、あくまで乗り方のスタイルとしてお伝えしています。研究の指数が力から求めるものであるのに対し、私たちの指標は動きから求める、いわば近縁の指標です。また、1回のライドのスタイルから、誰かの健康状態について何かがわかるわけではありません。
たった30秒でも意味がある理由
30秒のライドは短すぎて意味がない、と思われがちです。しかし研究は、そうではないことを示しています。高麗大学の研究では、30秒のラウンド3回だけで、ライドの指標からライダーのグループを見分けることができ、わずか2秒のライドにも有用な手がかりが含まれていました(Kim et al., 2025)。
1回のライドも、れっきとした練習になります。典型的なライドではハンドルを切る向きの切り替えが約75回あるので、30秒ごとに「見る、判断する、動かす」のループが何十回も繰り返されます。しかも1回のライドはごく短いので、繰り返すのも簡単です。1回の来館で数回、あるいは来館のたびに1回ずつ乗るだけで、バランスと協調が数週間、数か月でどう変わっていくかの記録が積み上がっていきます。長い運動にはまず申し込まないような人でも、30秒なら気軽に「やってみよう」と思えます。
年代ごとのパーフェクトレーサーの乗り方

2026年4月から10月までにUltiracerで行われたパーフェクトレーサーのライドのうち、センサーがライド全体を記録でき、ライダーがこぎ続けていた(平均6 km/h以上の)4,000回以上を対象に、ライド時点の年齢でグループに分けて調べました。データからわかったことは次のとおりです。
- 50代までは、年代が上のグループほどバランス品質が高い。中央値は、13歳未満で32、13〜19歳で37、20代で61、30代で68、40代で73、50代で86です。リーン安定性とステアリング安定性も同じ傾向です。
- 60代と70歳以上のライダーは、50代のライダーに近い。中央値はそれぞれ83と82で、20代、30代、40代のライダーより高くなっています。
- 60歳以上のライダーは、ゆっくりしたペースで走った。平均速度はおおむね11 km/hで、ほかのグループの13〜14 km/hより遅めでした。
- 協調のスタイルに違いがある。13歳未満のライダーのライドでは約5回に1回がはっきりしたリーン型でしたが、ほかのどのグループでも約10回に1回以下でした。30代以降では、約10回に4回がはっきりしたステアリング型でした。ただし、13歳未満のライダーの協調スタイルの結果は正確でない可能性があります。若いライダー全員が体に合った自転車で走ったわけではなく、サドルが高すぎる状態で乗っていた人もいました。
- 各グループ内のばらつきは大きい。どのグループでも、真ん中の半数のライドがおよそ30〜45ポイントの幅に広がっているため、グループ同士はかなり重なり合っています。
グループの間には、グラフには表れない違いもあります。20歳未満のライダーによるライドの約4回に3回は1つの会場で記録されたもので、その会場では、どの年代のライダーも、ほかの場所の同年代のライダーより安定性が低めでした。その会場を除くと、どのグループの中央値も上がりますが、年代ごとの傾向はほとんど変わりません。逆の方向の偏りもあります。50代のライダーによるライドの4分の1以上は、別の会場での数日間に記録されたもので、そこではライダーがとても安定して走っていました。これらのライドを除くと、50代の中央値は81となり、60歳以上のライダーと同じ水準になります。私たちは数値をありのままに公開しており、ライドが増えるのに合わせて更新していきます。
女性と男性のライダーを比べる

同じライドのうち、約10回に3回は女性ライダー、10回に7回は男性ライダーによるものでした。両者を比べると、次のようになります。
- バランス品質はほぼ同じです。 中央値は女性ライダーが54、男性ライダーが51で、真ん中50%のライドの範囲も似ています。同じ会場の同じ年代どうしで比べると、差は数ポイント以内で、どちらか一方に偏ってはいません。60歳以上では、女性ライダーの中央値がやや高くなっています(85対82)。
- 女性ライダーはゆったりしたペースで走りました。 平均速度はふつう時速12.0kmで、男性ライダーの時速13.9kmより遅く、どの年代でも遅めでした。差がいちばん大きかったのは60歳以上で、時速約10km対12.5kmでした。
- 男性ライダーのハンドルはやや落ち着いていました。 ステアリング安定性の中央値は男性ライダーが51、女性ライダーが46で、同じ会場の同じ年代どうしで比べると差は小さくなります。リーン安定性はほぼ同じです(44と42)。
- 大人では乗り方のスタイルに違いがあります。 20〜59歳では、男性ライダーのライドの約10回に4回がはっきりしたステアリング型だったのに対し、女性ライダーでは約10回に3回でした。
年代ごとに見ると、もっと大きな差が出ることもあります。たとえば50代では、男性ライダーのバランス品質の中央値が女性ライダーよりかなり高くなっています。ただ、この年代の女性と男性は主に別々の会場で走っており、両方が走った会場では、ある会場では男性が、別の会場では女性が高いという結果でした。年代と同じく、私たちはデータが示す内容をそのまま紹介し、解釈は読者のみなさんに委ねます。
パーフェクトレーサーを体験してみましょう
パーフェクトレーサーは、Ultiracerのキオスクでご利用いただけます。ウェルネスセンター、高齢者施設、ジム、学校、イベントにぴったりです。1回のライドは標準で30秒、プラットフォームがライダーを倒れないように支えるので、自転車に乗れる人なら誰でも遊べます。結果も見ればすぐにわかります。会員やゲスト、来場者の皆さんがどんなふうに乗るのか、見てみませんか。施設やイベントでUltiracerを試してみたい方、研究についてご相談したい方は、お気軽にお問い合わせください。
参考文献
- Cain, S. M., Ashton-Miller, J. A., & Perkins, N. C. (2016). On the skill of balancing while riding a bicycle. PLOS ONE, 11(2), e0149340. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0149340
- Kang, S., Park, J.-W., Kim, Y., Moon, J., Lee, Y., Lee, C.-N., Kim, J., Kim, S.-J., & Kim, B.-J. (2025). Biomechanical analysis of patients with mild Parkinson's disease during indoor cycling training. Journal of NeuroEngineering and Rehabilitation, 22, 127. https://doi.org/10.1186/s12984-025-01657-1
- Kim, Y., Kim, J., Kang, S., Lee, Y., Moon, J., Park, J.-W., Kim, B.-J., & Kim, S.-J. (2025). Convolutional neural networks-based early Parkinson's disease classification using cycling data from a steerable indoor bicycle. Scientific Reports, 15, 43253. https://doi.org/10.1038/s41598-025-27193-5